パン職人の転職ガイド|年収・求人動向・働き方をやさしく解説【2025最新版】

転職活動

こんにちは。「パンのことなら何でもおまかせください!」の 田中こねる と申します。

「転職した方がいいのかな」「今のままでもう少し様子を見ようかな」

そう迷ったときに、まず全体像をやさしく、具体的に把握できるように本記事をまとめました。

年収や求人の最新動向、働き方の違い(ホテル・町パン・工場など)、転職の基本ステップ、そしてミスマッチを避けるチェックリストまで。

現場での成功と失敗の両方を踏まえ、初めて動く方にも負担の少ない道筋をご案内します。

話の前に自己紹介させていただきます。

パン屋さんの世界に飛び込んでから、もう20年以上。
法人での店舗開発に関わったり、海外に修行に行ったり、自分のお店を立ち上げたりと、気づけばパンと一緒に人生を歩んできました。

その後は多店舗展開やフランチャイズ本部運営、M&Aの現場にも携わり、今は「ベーカリー店舗の売買・譲渡」「パン職人専門の転職エージェント」のお手伝いをしています。

パンが好きで、パンの仕事を続けたい人、これからチャレンジしてみたい人。
そんな皆さんの背中をちょっと押せる存在になれたら嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

この記事で分かること

  • 国内パン市場は再成長局面。食卓パン・菓子パン・惣菜パンなど日常需要の強さが追い風。
  • 一方、パン製造小売の倒産は2023年度に過去最多。
  • 「パン製造」の全国求人賃金(所定内・月額)の目安は約21.8万円(令和6年度)。
  • 民間統計では平均年収300〜370万円前後という推計。
  • 残業・深夜・休日の割増は労基法で明確。

市場と求人の「いま」を短くつかむ

パン職人の求人市場

まず全体観です。

パン市場はコロナ後の外出回復で日常使いのカテゴリーが底堅く、2019年度水準を上回る再成長局面にあります。

ただし、すべてが右肩上がりではありません。

原材料・エネルギー高、円安、高級食パンブームの収束などで、個店・小規模チェーンの経営は選別が進行。2023年度の「パン製造小売」の倒産は年度最多という統計が出ています(J-CAST)。

求人は総量としては底堅く、都市部では正社員募集も多い状況です(例:スタンバイの東京都パン屋・正社員掲載数)。

ただし、"どの土俵で働くか"がキャリアの伸びを分けます。

食卓・菓子・惣菜パンに強い現場、セントラルや冷凍生地の標準化に強い企業、ホテルベーカリーなど、伸びる領域に自分の得意を重ねていくのが基本戦略です。

年収の目安と伸ばし方(公的データ+民間統計)

データで分析

公的な職業情報プラットフォーム「Job Tag」では、パン製造の求人賃金(所定内・月額)の全国値で約21.8万円(令和6年度)が提示されています。

民間の求人統計は幅が出ますが、年収300〜370万円前後のレンジを示す推計が多く、地域・雇用形態・業態(ホテル/町パン/工場)で差が付きます。

私の経験上、年収を一段上げやすいのは次のようなスキルです。

  • 再現性の高い生産設計(配合管理・温度管理・歩留まり最適化)
  • SKUの“勝ち筋”を作る力(売上構成と製造タクトを両立)
  • セントラルや冷凍の理解(多店舗展開・品質標準化に直結)
  • 教育と標準化(手順書化・動画OJT・数値管理)

高年収を希望される人は、これらのスキル習得をおすすめします。

働き方の違いと相性診断

パン職人の年収の伸ばし方

同じ「パン職人」でも現場の前提が変わると求められる力が違います。

まずは、自分の相性を見極めましょう。

町パン(ベーカリー併設小売)

  • 特徴:多能工で仕込み〜焼成〜品出し〜接客まで。季節・天候の影響が大きい。
  • 向き:手触りのある製造とお客さまの反応が原動力になる方
  • 注意:イベントやフェア前は早朝・残業が増えやすい。

ホテル・ベーカリー部門

  • 特徴:ブッフェ・宴席対応、品質・演出のレベルが高い。
  • 向き:美観・仕立て・演出までこだわりたい方
  • 注意:土日祝・繁忙期の稼働が高く、体力配分が鍵。

工場・セントラルキッチン

  • 特徴:標準化・大量生産・品質保証。冷凍技術やHACCP運用が中核。
  • 向き:再現性と生産性を磨きたい方
  • 注意:シフト勤務や夜勤が前提のケースもある。割増賃金のルール理解は必須(深夜25%以上、時間外と重なると50%以上)。厚労省の解説 (厚生労働省)

転職の基本ステップ(初めてでも迷わない)

  1. 目的の言語化:年収?技術領域?働く時間帯?優先順位を3つに絞る。
  2. 情報収集:公的統計(賃金構造基本統計調査)と求人サイトの両方で相場観を掴む。 (厚生労働省)
  3. 職務経歴書の骨子作り:数値×工程×役割(例:平日◯kg/日、焼成回数、廃棄率、HACCP運用、OJT実績)。
  4. 作品ポートフォリオ:配合・水和率・捏ね上げ温度・発酵条件・焼成プロファイルを再現できる形で整理。
  5. 応募・面談:条件や文化のすり合わせ。
  6. 実技・トライアル:設備が違う前提で温度管理と思考プロセスを見せる。
  7. 条件確認・入社:固定残業・深夜・休日割増の計算方法を確認(法令と社内規定の両面)。厚労省 (厚生労働省)

ミスマッチを防ぐ簡易チェックリスト(保存版)

  • 主力SKUと焼成回数、欠品・廃棄の推移を教えてもらえるか
  • 設備の年式・保守体制(オーブン・ミキサー・発酵器)
  • 冷凍・半製品の活用比率と品質管理の方法
  • シフトの基本(夜勤・早朝)と繁忙期の総労働時間
  • 固定残業の時間数・深夜割増の扱い・計算方法
  • HACCPの運用と衛生教育、OJTの仕組み
  • 直近12か月の離職率と理由
  • 能力評価の基準(歩留まり改善・標準化への貢献が反映されるか)

実在のミニケースで「働き方のリアル」を掴む

パン作り

ケース1:札幌Uターン×町パン

カフェ勤務から製パンへ“原点回帰”した土門岳さんの「ふわもち邸」エピソードは、地方で技術を深める選択肢の良い例です

ケース2:営業職→職人→独立

川越「ベーカリー楽楽」上野さんの歩みは、異業種の強み(顧客視点や発信力)が店づくりに活きることを教えてくれます。

筆者の経験談:年収よりもまず「再現性」を

パン職人の作業風景

私は、法人での店舗開発→海外修行→独立、今はベーカリーの総合専門チームの一員として「店舗売買・譲渡・M&A」と「パン職人専門の転職エージェント」の運営に携わっています。

採用する側だった時期に、年収を上げられる職人の共通点は“再現性×教育力”でした。

レシピの背景や温度・時間の根拠を言語化でき、手順書と動画で他の人も同じ品質に到達できる。こういう方は、工房長やセントラルの中核で評価が一段上がります。

逆に、クリエイティブでおいしいものを作っていても、「なぜその配合・工程なのか」が説明できないと、昇給や役職に結びつきづらい。

転職活動では、作品写真と一緒に再現パラメータ(水和率・捏ね上げ温度・一次二次発酵・焼成プロファイル)を1枚にまとめるのがおすすめです。

もう一つは“売れるライン設計”

焼き上がりの時間割を販売ピークに合わせ、欠品と廃棄を月次で管理するだけで、粗利の改善と人員配置の最適化が進みます。

こうした具体の改善は、面接や実技で強い説得力になります。

2025年の注意点(相場観のブレを前提に)

統計や求人の数は時期・地域でブレます。

たとえばJob Tagの賃金はハローワーク求人統計由来で、民間集計(求人ボックス等)とは前提が異なります。

また、ブーム依存の業態は出店と縮小の振れ幅が大きく、倒産統計も示す通り選別が続いています。

伸びる土俵×自分の得意」を重ねる視点で、焦らず機を見て動きましょう。

はじめて動く人の「小さな一歩」

転職活動に一歩を踏み出す様子
  • 公的統計と求人サイトを1時間だけ横並びで眺め、相場観を掴む。

相場の参考サイト:賃金構造基本統計調査Job Tag

  • 職務経歴書の冒頭に「できること3つ」(再現性・標準化・教育など)を明文化。
  • 作品ポートフォリオ1枚(配合・温度・時間・焼成)を用意。
  • シフトや割増計算など、労務の基本を確認してから応募(厚労省の割増賃金解説はこちら)。

最後に

市場は、再成長と選別が同時進行です。

だからこそ、情報の目利きと「再現性×教育力」を軸に、無理なく長く続く働き方を選んでいきましょう。

この記事書いた人

田中こねる

パン屋さんの世界に飛び込んでから、もう20年以上。法人での店舗開発に関わったり、海外に修行に行ったり、自分のお店を立ち上げたりと、気づけばパンと一緒に人生を歩んできました。
パンが好きで、パンの仕事を続けたい人、これからチャレンジしてみたい人。そんな皆さんの背中をちょっと押せる存在になれたら嬉しいです。

記事監修:株式会社アルチザンターブル

参考リンク(本文中で触れた一次情報・公的データ)

※本文は公開情報と筆者の実務経験に基づき執筆しています。統計値は出典の算出方法・時点により変動します。

この記事で紹介したように、パン職人の転職には環境選びが重要です。
もっと詳しい求人や非公開情報を知りたい方は、こちらからお気軽にご相談ください。

株式会社アルチザンターブル 厚生労働省許可番号14-ユ-302409