パン職人の平均年収はいくら?職場別・年代別データと交渉のしかた【2025年最新版】

「転職を考える前に、まず相場を知っておきたい」「自分の今の年収は、職場や年代の標準と比べてどうだろう」。
そんな疑問に、できるだけ一次情報と公開データをもとに答えるのが本記事です。
パン職人(パン製造)の全国的な相場、職場(町パン・ホテル・工場など)での違い、年代別の目安、地域差、そして交渉のコツまでをやさしく整理しました。
みなさんこんにちは。
パン職人専門の転職エージェント 藤巻たすくと申します。
私はベーカリーのプロデューサーとして、法人での店舗開発から職人としての海外修行、独立開業、年商2億円超え、食パン専門店とベーカリー合わせて全国30店舗規模に育ててM&A譲渡、現在はベーカリー専門の店舗売買・譲渡・M&Aと、パン職人専門の転職エージェント事業を行っています。
採用“する側”“される側”双方の経験から、現場で使える数字の見方と交渉のポイントも具体的にお伝えします。
目次
この記事でわかること
- 公的データ(厚労省Job Tag、賃金構造基本統計)と民間統計(求人ボックス等)から見た、パン職人の最新相場
- 職場別(町パン・ホテル・工場/セントラル)の違いと、年収が上がりやすいスキル
- 年代別・地域別の目安と“ブレ”の理由
- 実在の求人レンジ(大手メーカー等)
- 交渉の鉄則と、労基法上の割増賃金の基礎
全国相場の基礎:まず「所定内」と「総支給」を分けて見る

- 厚労省の職業情報プラットフォーム(Job Tag)における「パン製造、パン職人」の求人賃金(所定内・月額)全国値は21.8万円(令和6年度)。
これはハローワーク求人を基にした「所定内賃金」の目安で、残業や深夜・休日割増、諸手当、賞与は含みません。(職業情報提供サイト(job tag))

- 民間集計(求人ボックス「給料ナビ」など)では平均年収が約351〜383万円という推計が公表されています。
こちらは求人票や各種データの集計で、賞与や手当込みの年収ベースが多く、「所定内」との比較時は定義差に注意が必要です。(求人ボックス)

この二つを混ぜないのが相場把握の第一歩です。
所定内が21.8万円でも、残業・深夜・賞与で総支給は上下に大きく振れるのがパン職人の給与構造です。
それは、朝夜の勤務や繁忙期の増産が影響しやすいことが背景です。
参考として割増賃金の基礎です。
労基法上、時間外25%以上・深夜(22時〜5時)25%以上、重なると50%以上。
求人票の「固定残業」や「深夜割増の扱い」を確認し、年収換算時に誤差を避けましょう。
職場別のレンジと“上がりやすいスキル”

同じパン職人でも、土俵が変われば賃金の作られ方が変わります。
ここでは“あくまで公開情報ベースの相場観+現場の実感”を重ねて整理します。
町パン(ベーカリー併設小売)
- 相場観:民間統計の中心レンジは年収300〜370万円前後。規模や立地、販売力で差がつきます。(キャリアガーデン)
- 上がりやすいポイント:
・売れるSKUの設計(焼き上がりの時間割と販売ピークの同期)
・欠品・廃棄の月次管理(歩留まり改善)
・標準化と教育(手順書・動画OJT) - 留意:繁忙期の稼働増、朝型の生活リズム。深夜割増の有無・固定残業の範囲を要確認(後述のチェックリスト参照)。
ホテル・リゾート・レストラン内ベーカリー
- 相場観:年収350〜450万円を掲示する募集も見られますが、夜朝・土日稼働の高さで時間外の影響が大。
- 上がりやすいポイント:美観・演出・大量提供時の再現性、宴席対応の段取り力。
- 留意:シフト制・イベント時の増産。評価は品質基準との適合とチーム運用が鍵。
工場・セントラルキッチン(大手メーカー含む)
- 相場観:年収350〜500万円のレンジ表示がある実在求人(大手メーカー)も。
例:マイナビ転職に掲載の山崎製パンは「初年度の年収351〜502万円」等の表記が確認できます。(マイナビ転職) - 上がりやすいポイント:
・標準化・再現性の高さ(冷凍・半製品、HACCP運用、工程管理)
・ライン生産性の改善(タクト・稼働率・歩留まり) - 留意:夜勤・交替制の比重により、深夜・時間外の加算で年収が振れます。
割増の計算方法は必ず確認しましょう。
年代別の目安と“なぜブレるのか”

公的統計の「パン・菓子製造工」区分やJob Tagの年齢別グラフで見ると、20代後半〜40代前半で伸びやすく、50代以降は緩やかに下降という一般的なカーブが見られます。

民間まとめでは、20〜24歳で約292万円、35〜39歳で約384万円、40〜44歳が約392万円でピーク、55〜59歳で約364万円という参考値が出ています(2022年データの二次集計)。(おもてなしHR)
ブレる要因は大きく三つ。
- 定義差(所定内か総支給か、賞与の扱い)
- 労働時間(早朝・夜勤・繁忙期の時間外)
- 業態差(町パン/ホテル/工場、冷凍・セントラル対応の有無)
より具体的な数字が知りたい方は、私たちを含めた業界動向に詳しい専門にぜひお問い合わせしてみてください。

地域差:都市部がやや優位、ただし例外もある

地域差は、都市部や工場集積地でやや優位という傾向が一般に見られます。
民間集計では、東京や大阪が高水準(例:大阪385万円周辺)、一方で250〜300万円台の県も多いという分布が示されています。
公的な都道府県別の基礎賃金や年齢階級別の数値は、賃金構造基本統計調査の都道府県別表で確認可能です(職種「パン・菓子製造工」や関連分類で抽出)。
具体の比較をする場合は、同じ定義(所定内/総支給、企業規模、労働者区分)で並べることが重要です。
参考:e-Stat
実在求人のレンジを“物差し”にする

公開中の求人レンジは交渉の強い味方です。
たとえば次のような大手メーカーの例は参考になります。
山崎製パン:基本給20.0万〜24.9万円(入社時の年齢・勤務地等による)、初年度年収351〜502万円のレンジ表記。配属や勤務時間により実際の総支給は変動します。
参考:マイナビ転職
また、パン屋全体の平均時給が約1,100円という民間集計もあり、非正規の相場感を掴む上で有用です。
正社員と副業・ダブルワークの比較にも活用できます。
交渉の鉄則:数字の“見える化”で勝つ

私自身、採用側としても職人側としても交渉の場に立ってきました。
「希望年収」ではなく「根拠のある数字」を持ち込む。
これが一貫して効きます。
所定内と時間外の“分解提示”
- 現在の給与を所定内/時間外/深夜/賞与に分解して提出。
- 直近3か月の平均実働時間と割増の内訳を明示。
- 目標とする総労働時間の上限を先に共有(繁忙期の例外運用を含む)。
根拠が明確だと、企業は原価・生産計画に織り込みやすく、交渉が前進します。
再現性と生産性を証明する
- 歩留まり改善(欠品・廃棄の月次推移)
- 焼成スケジュールの設計(販売ピークとの同期)
- 標準化・教育実績(手順書・動画・OJT)
- 冷凍・セントラル対応(再現性のKPI)
これらは町パンでも工場でも評価が年収に直結します。
法定割増の理解は“防具”
- 深夜・時間外・休日の割増計算は、求人票や就業規則の読み方を知っているだけでミスマッチを避けられます。
厚労省の解説ページで定義を確認し、固定残業の時間数・超過時の扱いを必ず質問しましょう。
年代別・地域別・雇用形態の「目安表」
以下は、本文で挙げた公的・民間の公開情報と、実在求人のレンジから作成した目安表です。
定義や時期、企業規模、シフトで大きく変わるため、交渉の起点としての参考にお使いください。
※数値はすべて税込・年額換算の概算
| 区分 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 備考・出典の例 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全国平均レンジ(総支給の民間推計) | 280–340万円 | 330–400万円 | 340–420万円 | 320–400万円 | 求人ボックス等の集計値。所定内21.8万円は別指標(Job Tag)。(求人ボックス) |
| 町パン(小売併設) | 280–360万円 | 320–400万円 | 330–420万円 | 320–390万円 | 地域と販促力で差が大。欠品・廃棄管理で上振れ。(キャリアガーデン) |
| ホテル・レストラン | 320–420万円 | 350–450万円 | 360–460万円 | 340–420万円 | 夜朝・土日稼働の時間外影響が大。 |
| 工場・セントラル(大手含む) | 320–420万円 | 350–500万円 | 360–520万円 | 340–480万円 | 大手は交替制で年収レンジが広い。実在求人例あり。(マイナビ転職) |
| 地域差の目安(例) | 北海道 300万円前後 | 関東上位 350–450万円 | 大阪 370–390万円 | 県により250万円台も | 民間まとめや都道府県別年収表の傾向。(求人ボックス) |
注:上表は所定内賃金(Job Tag)と年収(民間集計・求人)を混同しない前提の目安レンジです。
実際の交渉・比較では、同じ定義・同じ雇用区分(正社員/パート)で揃えてください。
実在のケースと肌感覚

私が関わったセントラル併用の多店舗展開では、標準化と冷凍工程の理解がある職人は、同等年齢でも30〜60万円/年ほどレンジが上にぶれやすい傾向がありました。(役割:レシピの工業化、教育、品質保証)
町パンの工房長クラスでは、売れるSKUの設計+歩留まり改善+教育まで担える方は、350万円台→400万円台の打診が現実的でした。(地域・規模に依存)
公開求人のレンジ確認も極めて有効です。
例えば山崎製パンの求人では初年度351〜502万円と幅が示され、配属・時間外・深夜の比重がレンジを左右することが読み取れます。
参考:マイナビ転職
ミスマッチを避ける質問チェックリスト(給与編)
- 所定内の基本給はいくらか(固定残業や諸手当を除いた額)
- 固定残業の時間数と超過時の精算方法
- 深夜・休日の割増計算と、対象となるシフト比率(月間平均)(J-CAST ニュース)
- 賞与の算定基準(評価指標と在籍要件)
- 繁忙期の総労働時間の実績(直近12か月)
- セントラル・冷凍比率と夜間増産の有無
- 欠品・廃棄の月次推移(歩留まりKPI)
- 工房長・教育・標準化への役割期待と手当
- 設備投資・保守計画(生産性と安全性の担保)
- 昇給テーブルと評価の例(数値改善の反映ルール)
年収を上げる「作品ポートフォリオ」の作り方
- 製品写真の横に、水和率/捏ね上げ温度/一次・二次発酵/焼成プロファイルを記載(再現性の根拠)。
- 売上構成とタクト(1時間当たりの焼成数)を簡単な表に。
- トライアル実技前に設備差を前提とした代替工程も言語化。
- 町パンなら焼き上がり時間割と販売ピーク、工場ならHACCP運用とロット管理を示すと評価が上がります。
データの“見方”とアップデート

- Job Tagの21.8万円は求人賃金(所定内・月額)の全国平均。年収と比較するときは定義差を必ず確認。
- 都道府県別・年齢階級別の詳細は賃金構造基本統計調査(e-Stat)で確認できます。比較の際は同じ母集団・同じ年で揃えましょう。
- 民間集計は求人の出方に左右されますが、市場感のいまを掴むのに有用です。
参考:職業情報提供サイト(job tag)、e-Stat、求人ボックス
まとめ:数字は“怖くない”、武器になる

年収の議論は、所定内と総支給の定義をそろえるだけで、ぐっと透明になります。
そのうえで、再現性(標準化・冷凍・HACCP)と売れるライン設計(歩留まり・焼成スケジュール)を言語化できれば、職場が変わっても評価されやすく、レンジ上限に近づきます。
市場は再編と日常需要の強さが同居する局面。
数字を味方に、無理なく続けられる働き方と、納得度の高い年収を取りにいきましょう。
筆者の経験談(補記)
私はベーカリーのプロデューサーとして、法人での店舗開発から職人としての海外修行、独立開業、年商2億円超え、食パン専門店とベーカリー合わせて全国30店舗規模に育ててM&A譲渡、現在はベーカリー専門の店舗売買・譲渡・M&Aと、パン職人専門の転職エージェント事業を行っています。
交渉の場面では、数字の分解(所定内・時間外・深夜・賞与)と再現性の証明(工程パラメータ・歩留まり)が、待遇改善に最も効く“人柄以外の武器”だと痛感しています。


この記事書いた人
藤巻たすく
ベーカリーのプロデューサーとして、法人での店舗開発から職人としての海外修行、独立開業、年商2億円超え、食パン専門店とベーカリー合わせて全国30店舗規模に育ててM&A譲渡、現在はベーカリー専門の店舗売買・譲渡・M&Aと、パン職人専門の転職エージェント事業を行っています。
私の経験が、皆さんの未来に少しでもお役に立てたら嬉しいです。
記事監修:株式会社アルチザンターブル
参考リンク(本文中で触れた公開情報)
- 厚生労働省 Job Tag「パン製造、パン職人」求人賃金(所定内・月額)や年齢別グラフ。(職業情報提供サイト(job tag))
- 厚生労働省「時間外・休日・深夜の割増賃金(FAQ・解説)」(J-CAST ニュース)
- 賃金構造基本統計調査(e-Stat・都道府県別職種データの入口)(e-Stat)
- 求人ボックス(パン職人/パン屋の年収・時給の民間集計)(求人ボックス)
- 実在求人レンジの例(マイナビ転職:山崎製パンの製造職等)(マイナビ転職)
- 地域差の民間まとめ(都道府県別の年収例・近畿や東京が高水準とするデータ)(求人ボックス)
※本文は公開情報と筆者の実務経験に基づき執筆しています。統計値は出典の算出方法・時点により変動します。
この記事で紹介したように、パン職人の転職には環境選びが重要です。
もっと詳しい求人や非公開情報を知りたい方は、こちらからお気軽にご相談ください。
株式会社アルチザンターブル 厚生労働省許可番号14-ユ-302409


