未経験からパン職人になるには?必要なスキルと採用されやすい条件【完全ガイド】

パンが好きで、「いつかパン屋で働いてみたい」と思っている方へ。
結論から言うと、未経験でもパン職人になることは十分可能です。
採用側が見ているのは“完璧な技術”よりも、“学ぶ姿勢”“続ける力”“衛生意識”。
ここを押さえれば、スタートラインに立てます。
こんにちは、田中こねるです。
私は、パン屋さんの世界に飛び込んでから、もう20年以上。法人での店舗開発に関わったり、海外に修行に行ったり、自分のお店を立ち上げたりと、気づけばパンと一緒に人生を歩んできました。
現在は、ベーカリーの総合専門家としてパン屋専門の店舗売買譲渡M&Aと、パン職人専門転職エージェント事業を行っています。採用“する側”と“される側”の両方を見てきた立場から、未経験からの最短ルートを、できるだけやさしく、具体的にお伝えします。
目次
この記事でわかること
- 未経験でも採用される理由と現場が見るポイント
- パン職人の仕事内容と一日の流れ(現実的なタイムライン)
- 最初の半年で身につけるべき3つの基礎スキル
- 採用されやすい人の特徴と、やりがちな失敗の回避法
- スクールに通うべきかの判断軸と費用対効果
- 今日からできる準備ステップ(生活リズム・体験・相談)
- 参考になる一次情報や調査先へのリンク
はじめに:誰でも“最初の一歩”は未経験から

未経験=不利、と考えがちですが、実際の現場では「育てがいのある人」を求める声が少なくありません。
とくに人手不足が続くいま、基本動作が丁寧で、朝型生活に対応でき、衛生ルールを守れる人は歓迎されます。
最初の配属は補助的なポジションでも、半年〜1年で仕込み・成形の中心に入っていく方は多いです。
私の相談者さんも、「パン職人の世界は、特別な資格や家系がないと入れない」と、そんな印象を持たれる方も多くいらっしゃいますが、実際には全く違います。
採用する側が見ているのは、「この人ならきっと続けてくれるだろう」「丁寧に仕事をしてくれそう」という“人としての安心感”です。
未経験でも、パンが好きで、朝の時間を大切にできる方なら十分にチャンスがあります。
私たちも最初の面談では、技術の話よりも「なぜパンが好きになったのか」「どんなお店に惹かれるのか」から聞きます。
その人の“パンとの物語”が、転職の原動力になるからです。
パン職人の仕事内容と一日の流れ

パン職人の仕事は、大きく分けて「計量」「仕込み」「発酵管理」「分割・成形」「焼成」「仕上げ」「清掃・衛生記録」。
店舗規模やスタイルによって役割分担が変わりますが、未経験の方はまず“正確さが求められる工程”から入ることが多いです。
一日の流れ(例:路面ベーカリー)
- 3:30〜4:30 出勤、温度計で室温・水温を確認、仕込み準備
- 4:30〜6:00 計量・仕込み(ミキサー)、捏ね上げ温度の記録
- 6:00〜7:30 分割・ベンチタイム・成形開始、同時に焼成立ち上げ
- 7:30〜10:00 焼成と次の仕込みを並行、品出し・仕上げ
- 10:00〜12:00 追加焼成・仕込み、掃除・片付け、衛生記録
- 12:00〜 引き継ぎ、在庫・翌日の仕込み計画確認
ポイントは「温度・時間・量」を常に管理し、作業を“段取り”で組み立てること。
未経験の方は、この“段取り”を先輩の動きから学ぶのが上達への近道です。
パン職人の仕事は、想像以上に“段取り”が大切です。
一見すると力仕事に見えますが、実は「温度・時間・工程の管理」が中心で、体よりも頭を使う仕事でもあります。
面接では「早朝に無理なく通えるか」「立ち仕事やチーム作業に慣れているか」などを必ず確認します。
通勤の現実性や生活リズムの説明を具体的にできる方は、それだけで信頼されやすいです。
また、現場の一日はあっという間に過ぎます。だからこそ、「今日はこれができるようになった」と小さな成長を感じられる人が、長く続けられています。
未経験でも“昨日より今日少し上達”を重ねる気持ちがあれば大丈夫です。
参考:職業の基本像は厚労省「職業情報提供サイト(jobtag)」で確認できます→ パン製造工(製造)の職務概要(一般論の把握に有用)https://shigoto.mhlw.go.jp/
未経験者が最初の半年で覚える“基礎スキル”3つ

衛生管理(HACCPの考え方)
手洗い・爪・髪・作業着・ふきんの使い分け、原材料の温度管理、アレルゲン管理、交差汚染の回避など、“当たり前”を当たり前に行う力が基礎です。
衛生記録(温度・清掃・点検)の書き方も早めに慣れておきましょう。
参考:消費者庁「HACCPに基づく衛生管理」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/haccp/
厚労省「HACCPに沿った衛生管理」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/
正確な計量・仕込みと“捏ね上げ温度”の理解
配合を1g単位で外さない計量、原料温度・室温・ミキサー発熱を踏まえた仕込み水温の調整、捏ね上げ温度の記録が基本。
未経験の方は“温度が結果を決める”ことを体で覚えるフェーズです。
チーム作業と段取り(並行処理)
分割・ベンチ・成形・焼成を複線で回す段取り。次の工程を先読みして動く“気づき力”が評価されます。
メモや簡単なTODOをポケットに入れておくのも効果的です。
最初の半年は、焦らず“基礎の積み上げ”に集中してください。
技術的なことより、「きれいに並べる」「声をかける」「温度を記録する」など、丁寧な習慣を身につける時期です。
この段階で大切なのは、上手くできるかよりも、“繰り返すことで覚える”という姿勢。
パンづくりの世界は、努力が見えやすい職場です。
失敗を隠さず「こうした方が良いですか?」と聞ける人ほど、信頼が早く積み上がります。また、先輩職人は“素直に聞いてくれる人”を一番大切にします。
勇気を持って質問できる人ほど、驚くほど成長が早いものです。
採用されやすい人の“人柄と態度”

ここでは、"どんな人が採用されやすいのか"をお伝えします。
私も職人さん採用を担当していた時に、加点していたポイントです。
- 早起きと生活リズムへの覚悟がある(朝型に移行する訓練を事前にしている)
- 清潔感がある(髪・爪・作業着、香りの配慮)
- 指示を復唱し、メモを取る習慣がある(現場にメモを持ち込めない時は、自分の中で指示を復唱する)
- 体力の自己管理(食事・睡眠・水分補給)を意識している
- 「できません」ではなく「やってみます、その上で助言をください」と言える
「パンが好き」「食に関心が高い」という動機も強みです。未経験の方は“好き”を起点に継続する力が高い傾向があります。
採用担当者が最も重視しているのは、実は「技術」よりも「人柄」です。
パン屋さんの現場はチームプレーが重要です。
どれだけ上手にパンを焼けても、チームの雰囲気を乱す人は続きません。
逆に、まだ技術がなくても「明るい返事」「素直な態度」「清潔感」がある人は、必ず伸びます。
特に印象に残るのは、面接で“パンが好きな理由”を語れる人。
たとえば「休日に食べ歩きをして、自分でも再現してみた」など、パンとの関わりを楽しんでいる方は、職人としての原石です。
現場で評価されるのは“完璧さ”ではなく“誠実さ”。
自分らしい歩み方で、一歩ずつ進めばいいのです。
未経験者がやりがちな失敗と回避策

未経験の方がやってしまいがちな失敗があります。
対策と一緒にお伝えします。
失敗1:理想と現実のギャップに驚く
対策:見学・体験入店で“におい・音・温度・スピード感”を体で理解する。面接で「工房を短時間見学させてください」と申し出てOK。
失敗2:朝型に慣れず、体調を崩す
対策:応募前2週間は模擬シフト(就寝21時・起床4時など)で生活リズムを作る。睡眠アプリや耳栓など、道具も活用。
失敗3:孤立して辞めてしまう
対策:相談できる先輩がいる職場を選ぶ。入社初日に「教えていただきたいことはメモにまとめます」と宣言して関係づくりの導線を作る。
失敗4:給与や固定残業の仕組みを理解せず入社
対策:求人票の“定義”を分けて確認(所定内、固定残業の時間数、超過時の精算、深夜割増)。厚労省の一次情報で割増率を知っておく。
参考:厚労省FAQ「時間外・休日・深夜の割増賃金」https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/070622-1.html
パン職人の仕事は、早朝や立ち仕事など大変な面もあります。だからこそ「環境を理解して始めた人」と「想像だけで飛び込んだ人」では、初期の3ヶ月で大きく差が出ます。
一番多い離職理由は“忙しさ”ではなく“孤立”。
現場で誰にも相談できず、気持ちが続かなくなってしまうケースが多いです。
そうならないために、私たちは紹介前に「教育担当がつくか」「新人が相談しやすい雰囲気か」を必ず確認しています。
未経験の方こそ、教えてもらいやすい環境を選ぶことが大切です。
勇気を出して「まだ慣れていないのですが…」と一言言える職場なら、きっと長く続けられます。
学校・専門スクールに通うべき?

独立して自分のお店を持つことを夢に、ベーカリー業界に飛び込んでくる方、学校や専門スクールに通うか悩む時があると思います。
菓子製造業のアレコレを学べる学校は、スキルや知識を身につけることができるのがメリットです。
しかし、費用をかけて学んだからといって、必ず現場で評価が上がるというわけではありません。
スクールのメリット
- 衛生や製法の基礎が体系的に学べる
- 設備を使った実習で失敗を繰り返せる
- 同期や講師のネットワークができる
留意点
- 卒業=即即戦力ではない(現場は“再現性と段取り”を最重視)
- 学費・時間の投資対効果を見極める必要
- スクール出身でも現場での“段取り力”は別途鍛える
スクールは“遠回り”ではありませんが“万能”でもありません。
予算と目的に応じて、通学・通信・短期講座・独学(書籍×体験入店)を組み合わせるのが現実的です。
スクールに通うかどうかは、その人の目的次第です。
「基礎を体系的に学びたい」「衛生管理を理解してから現場に入りたい」という方には、とても良い選択です。
ただし、“学校を出た=即戦力”とは限りません。
現場は、スピード・再現性・段取りを重視します。
一方で、スクール卒業生は“パンの基礎用語や衛生意識”があるため、採用側も教えやすく感じるのも事実です。
もし迷うなら、「体験コースや短期講座」から始めても十分です。
私たちは、学ぶ意欲を見せてくれる方には、現場実習ができるお店を紹介することもあります。
学び方は一つではありません。あなたに合った道で、一歩ずつ積み上げましょう。
未経験から転職するための“3ステップ”

パン業界を知る(市場・仕事・相場)
求人サイトで条件相場を把握し、2〜3店舗は見学。できれば半日体験や短期アルバイトで“現場の温度”を感じる。
ベーカリー業界についてネット検索し、現場の声を読む。私たちパン職人専門の転職エージェントの話を読むのも効果的ですよ。
参考:求人動向や相場感の把握に便利
Indeed(パン職人 求人)https://jp.indeed.com/
求人ボックス(パン屋 求人)https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/
生活リズムを整える(朝型シフト練習)
就寝・起床時間を2週間前倒し。
体調・食事・通勤経路を本番想定に合わせて試す。
家族の理解も事前に得ておく。
やはり生活リズムは重要です。特にパン職人は朝早い業界なので、早起きが苦手な方は、朝型シフトにしていきましょう。
エージェントに相談し“自分に合う職場”を選ぶ
希望条件(給与・時間・学びたい技術)を優先順位で言語化し、職場の指導体制や固定残業の定義など“後悔しやすい点”をプロに代行確認してもらう。
自分では気づかないポイントを的確にアドバイスしてくれるのが、転職エージェントです。
転職に不安がある場合は、一度相談してみることをお勧めします。
公的窓口でも相談できますよ。
参考:総合労働相談コーナー(労働条件の悩みは公的窓口で確認)https://www.mhlw.go.jp/chutou/koyou/roudou-soudan.html
多くの方が「まずは応募してみよう」と考えますが、実は“順番”が大切です。
いきなり応募するよりも、「体験して→比べて→相談する」。
この流れを踏むだけで、転職の成功率は大きく変わります。
見学や短期アルバイトで現場の空気を感じ、通勤時間や生活リズムを整えたうえで面談をすると、条件交渉もスムーズです。
私たちも、最初から多くの求人を提案するのではなく、まず“どんな働き方をしたいか”を一緒に整理します。
「家族との時間も大切にしたい」「パンの成形を学びたい」など、言葉にできない想いを形にするのが私たちの役目です。
安心して話してください。焦らず、一緒に探しましょう。
面接・見学でそのまま使える質問例

参考までに、面接や見学で活かせる質問の例をご紹介します。
- 固定残業は何時間分でしょうか。超過時の精算方法も教えてください。
- 教育体制はどのような形でしょうか。最初の1か月の目標を共有いただけますか。
- 直近12か月で最も忙しい月の総労働時間はどれくらいでしたか。
- 主力商品の焼成回数とピーク時間帯を教えてください。
- 衛生記録(温度・清掃)はどのように運用されていますか。
面接では、待遇や勤務時間よりも“相手への敬意”を持った聞き方が大切です。
たとえば「入社前に理解しておきたいので、繁忙期の勤務時間を教えていただけますか」といった聞き方なら角が立ちません。
聞き方一つで印象は大きく変わります。また、良い職場ほど、こうした質問に誠実に答えてくれます。
私たちは、事前にそのお店の“質問への対応”も確認しています。
どんなに条件が良くても、不誠実な対応があれば紹介しません。
事例:未経験から半年で“仕込み担当”に上がったケース

実際に私がサポートさせていただいた方の事例を簡単にご紹介します。
20代後半・販売職からの転職。
入社前に朝型生活へ切替、体験入店で“段取りの速さ”に感動し、入社後は毎日5分の復習メモを継続。
衛生記録と捏ね上げ温度を徹底した結果、3か月目で仕込み補助、6か月目に主体担当へ。
面接では「継続できる生活設計」と「学びの記録」が評価されました。
この事例のように、未経験から半年で大きく成長する人に共通するのは「学びの記録を残している」ことです。
完璧でなくてもいいのです。「今日覚えたこと」「次に気をつけたいこと」を小さなノートに書くだけで、振り返りの質が高まります。
採用側も、そうしたメモを見ると“誠実に学ぶ姿勢”を強く感じます。
私たちは面接前に「自分の言葉で話す練習」を一緒にしています。
上手に話す必要はありません。“想い”が伝われば、それで十分です。
まとめ:最初の一歩を、今日の準備から

未経験からパン職人になる道は、遠いようで近道もあります。
衛生・正確さ・段取りという“3つの基礎”を丁寧に積み上げ、生活リズムを整え、体験と相談で現場との距離を縮める。
パン職人の道は、決して華やかではありません。でも、そのぶん“人の温かさ”と“パンの香り”に包まれた仕事です。
未経験から挑戦するあなたの気持ちは、心から尊敬します。
焦らなくて大丈夫です。パンづくりと同じように、ゆっくり発酵させる時間があっていい。
一緒にそのリズムをつくっていきましょう。
あなたの最初の一歩が、これからの人生を変えるきっかけになります。
私たちは、その一歩を全力で応援します。


この記事書いた人
田中こねる
パン屋さんの世界に飛び込んでから、もう20年以上。法人での店舗開発に関わったり、海外に修行に行ったり、自分のお店を立ち上げたりと、気づけばパンと一緒に人生を歩んできました。
パンが好きで、パンの仕事を続けたい人、これからチャレンジしてみたい人。そんな皆さんの背中をちょっと押せる存在になれたら嬉しいです。
記事監修:株式会社アルチザンターブル
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参考リンク(一次情報・調査先)
- 職業情報提供サイト(厚生労働省・jobtag)
https://shigoto.mhlw.go.jp/ - HACCPに基づく衛生管理(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/haccp/ - HACCPに沿った衛生管理(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/ - 時間外・休日・深夜の割増賃金(厚労省FAQ)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/070622-1.html - 総合労働相談コーナー(全国)
https://www.mhlw.go.jp/chutou/koyou/roudou-soudan.html - Indeed(パン職人 求人)
https://jp.indeed.com/ - 求人ボックス(パン屋 求人)
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※本文は公開情報と筆者の実務経験に基づき執筆しています。統計値は出典の算出方法・時点により変動します。
この記事で紹介したように、パン職人の転職には環境選びが重要です。
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株式会社アルチザンターブル 厚生労働省許可番号14-ユ-302409


